Realistic Virtuality: Ryusuke Ito

現実的な仮想性: 伊藤隆介/制作の周辺

ウソをつくのは難しい(4)

インノチェンティ01絵本の世界でも、鮫の体内の描写は「ディズニー型」が多かった。
あるいは描くのはピノキオと父親に絞って、周囲の環境についてはオミットするという手も結構あったのは、絵画ならではだ。ミニマムなウソと言えようか。

感心したのは、西村書店から出版されている「ピノキオの冒険」(1992/金原瑞人訳)。
ロベルト・インノチェンティという人による挿絵は、舞台となるイタリア19世紀後半の考証も緻密だ。
鮫の体内も背骨はなく、内臓の雰囲気を全面に押し出している。とはいえ、この「雰囲気」を出すために、別の演出が採用されている。単なる粘膜の壁では臨場感が足りないと思ったのか、人間の大腸を思わせるジャバラのような構造(ハウストラ)が描かれていて、効果的だ。
まあ、腸まで深部に引き込まれたら、ピノキオも口までは戻って来れないと思うけど。

↓「ピノキオの冒険」(西村書店)
http://www.nishimurashoten.co.jp/pub/details/305_851.html
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ウソをつくのは難しい(3)


ベニーニ01鮫はそもそも軟骨類に属し、骨がみんな軟骨(硬いらしいが)で出来ている原始的な魚だということだ。骨が立体的なイワシなどと比べて、ずいふん下等な(?)生物のようで、「ピノキオ」映像の胃袋のイメージからはもっとも遠い。
ロベルト・ベニーニの監督・主演の「ピノッキオ」(2002)には、ティム・バートンの「ジャイアント・ピーチ」(1996)の機械の鮫にちょっと似た感じの、CG製の鮫が登場する。
胃袋はさすがにセットだが、ここでも肋骨みたいな凸凹のある壁が踏襲されている。難破船の陰になって天井は見えないが、おそらく背骨はある(あるいは感じさせる)空間になっている。でないとこれは「トレマーズ」(1990)の体内になってしまう。
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ウソをつくのは難しい(2)

実写の胃袋04「ピノキオ」の実写の映画やテレビ番組も多く作られている。
調べてみると、子供のころ、夕方のNHKで放映されていたイタリアのテレビドラマもDVDが出ていた。「ピノッキオの冒険」というタイトルで、日本での放映は1974年とのこと。
イタリア語で「Le Avventure di Pinocchio」と検索すると、よく出てくるのがこの番組。主題曲も懐かしく、ネット上で色々なアレンジ版が聞けるから、母国でも大ヒット番組だったんだろう。

その番組での「胃袋」は、全面に血管のような、神経のようなものが這っている。胃というよりは食道みたいに細長い空間だが、天井には脊椎みたいなものが見える。背骨に類するイメージは欲しかったんだろう。そうでないと、単なる「グロな洞窟」になってしまう可能性がある。
ドラマ自体も、ピノキオが子役(人間)や人形に入れ替わったりする象徴的な演出だったから、こちらも演劇美術に近いセットだ。

↓DVDの紹介はこちら

ピノッキオの冒険 DVD-BOXピノッキオの冒険 DVD-BOX
アーティスト:フィオレンツォ・カルピ
販売元:ビデオメーカー
発売日:2003-04-25
おすすめ度:5.0
クチコミを見る
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ウソをつくのは難しい(1)

クジラの胃袋01ピノキオについて調査中。
ディズニーのアニメ映画(1940)では“眠りクジラ”に飲まれてしまうピノキオだが、コッローディの原作(1883)では大きな鮫に飲まれている。
映画でおなじみのイメージでは、胃袋の天井部には背骨が見えるのだが、鮫の場合はおそらく見えない。というか、クジラの場合でも胃袋に入ってしまったら、粘膜しか見えないだろう。
それでは「絵」にならないので、イラストレーターや映像作家諸氏は、口から胃袋に向かう(人間で言えば)ノドの部分が「現場」であると(無理矢理)解釈しているようだ。
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街に出てみる

人の多いところは苦手なのだが、やむを得ぬ用で外出。
久しぶりの大通エリア(札幌中心部の繁華街)は、春先で人の出は多いものの、札幌駅周辺の商業エリアにおされて、地上も地下街もなんとなくすさんでいる印象。
PARCOの看板に「サンダーバード展 200円」の看板とあるので、プロップでもあるかと期待してちょっと寄ってみる。

いまどき「200円」というのはすごいが、安いものには訳がある。
会場内には玩具コレクションや、時代背景を示すパネルなどが展示されているだけで、TV番組「サンダーバード」そのものとはあまり関係のないものばかり。これは、1966年ころの「サンダーバード」ブームの諸相を展示する催しだったのである。
ポスターをよく見れば、確かに「Thunderbirds in Japan!!」とある。とはいえ、キャプションは「日本上陸40周年記念企画」としかなく、これから内容を想像するのは難しい。まあ、「美空いばり」「大板血(おおいたち)」のたぐいと言っていいだろう。

素直に「懐かしーい!」「これ、持ってた!!」と楽しめればいいんだろうが、「そういうモード」ではなかったのであまり楽しめない。なにより、「60年代のお茶の間の実物大ジオラマ」の出来がいただけない。上野公園の下町風俗資料館にすら及ばない。「トレーシー一家のモダンなラウンジ」のジオラマも、ただの書き割りだったのには驚いた。たしかにデパートの怪獣ショーを彷彿させ、60年代っぽいレベルではある。
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伊藤隆介
映像作家/美術作家
ときどき評論執筆

Ryusuke Ito
Filmmaker/Artist
Part-time Critic
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