Realistic Virtuality: Ryusuke Ito

現実的な仮想性: 伊藤隆介/制作の周辺

今敏と、その時代(1)

火曜日の夜、マンガ家・滝沢聖峰から電話があり、今敏の訃報にただ驚く。
メディアでは「アニメーション映画監督」と記されていたが、僕にとっての今敏は、やはり今でもマンガ家だ。

今敏と滝沢聖峰は中学生時代からの親友(ライバル?)で、紹介されたのは高校生のときだったと思う。
たしか、投稿する予定のマンガ作品を見せてもらったのではなかったか。舌をまくような、達者な画だった。
高千穂遙の小説「ダーティペアの大冒険」のパロディ風の、様々なアニメやSFが換骨奪胎されたマニア向けの作品だった。さすがに「あによぉ」というネームはどうか…と指摘したら、照れくさそうに、嬉しそうに笑った。
「ダーティペア」のアニメ化どころか、小説が刊行されたかどうかの時期だから、1980年だったのだろう。

思い出深いのは、大学受験で上京した時に雀卓を囲んだこと。高名なギタリストである兄上の、都心なのに草深い一軒家で、本物のアフガン・ハウンドを生まれて初めて見た。しかも2匹。

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雀卓での話題は、ただただマンガの話だった。
その月のアニメージュの表3に掲載された、「風の谷のナウシカ」というマンガの小さな予告カット(本篇とはちょっと違う、北欧チックなもの)について、あの宮崎さんが描くマンガなんだから、これはもう傑作に間違いないよな…などと意気投合して興奮したのだった。
実際に連載がはじまったら、ブライアン・オールディスのパクリみたいな作品でちょっと呆れたが、傑作だった。まぁ、宮崎駿という人はコラージュ作家でもあるから、驚くことではないのだが。
ただ、その時は誰も、その宮崎駿といちばん共通の才能を持っているのが今敏だとは(本人も)気づいていなかった。

雀卓を囲んだもう一人は学生服を着た青年で、森井綾という。今敏の釧路湖陵高校の同級生で、今(兄)宅に寄宿していた。麻雀の結果は-79で、森井の一人負けだった。
森井は今、北翔大学でメディアデザインの教員になっている。思えば、長い付き合いになった。

作家としての今敏にきちんと書いておこうと思ったら、単なる思い出話になってしまった。
(つづく)

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伊藤隆介
映像作家/美術作家
ときどき評論執筆

Ryusuke Ito
Filmmaker/Artist
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