Realistic Virtuality: Ryusuke Ito

現実的な仮想性: 伊藤隆介/制作の周辺

映画「SUPER 8」(1)

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結構前になりますが、映画「SUPER 8/スーパーエイト」(J.J.エイブラムス)を観ました。
基本的にはPG13のジュブナイル映画(中学生向け)であって、大人が観てどーこー言う内容ではありません。
洋画配給会社はセコいので、こういったジュブナイル映画も、まるで一般映画のように偽装して公開します。「プリティ・プリンセス」(2001)など、かつてのアン・ハサウェイ主演のディズニー映画などは、基本的に子供向け。女子高生を主人公にしているということは、観客は小学生か、幼稚な中学生であって、予告編にだまされてこれを観に行く日本の(大学生とか大人の)カップルはいい面の皮です。
ちなみに、ディズニーブランドの大人向けの作品は、タッチストーン、ミラマックス、ハリウッド・ピクチャーズのレーベルで製作されています。「パイレーツ・オブ・カリビアン」はディズニー本社の製作なので、大人の僕は観に行きません。

で、「SUPER 8」。
ジュブナイル映画ですが、8ミリ映画がタイトルだから僕は観に行きました。
子供向けとはいえ、引率の大人(親たち)がダレちゃうと次回は引率してくれなくなるので、「101」(1996)だったか「102」(2000)のように、映画の中盤あたりにはお色気(シャワー)シーンなども入っているものです。「水戸黄門」と同じですね。
で、今回の「エサ」は親の世代のノスタルジーであります。

そういうわけで、見事に映画少年の妄想映画になってました。
8ミリ映画少年が不幸な美少女にモテる…って、「あるワケない」映画になっているのは、ジュゼッペ・トルナトーレの「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)や、大林宣彦監督の「さびしんぼう」(1985)と同じです。
いちばん「ありえない」と笑っちゃったのは、模型づくりと特殊メイクマニアの主人公を、美少女が尊敬するという流れ。「こんなスゴいこと、どこで習ったの?」とすっかり尊敬の眼差しの女の子に、「ディック・スミスの特殊メイクの本」と真面目に答えるのがもっと変。島本和彦先生の「アオイホノオ」で、主人公の焔燃(ホノオ モユル)がトンコ先輩にアニメを熱く語るのと同じ。
ちなみにディック・スミスの本は、これ。

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SF界の伝説・フォーレスト・J・アッカーマンの「フェイマス・.モンスターズ・オブ・フィルムランド」の別冊で、現在の映画人(の子どものころ)に大きな影響を与えた本。現在も書籍で改訂版が出ています。
「SUPER 8」で、ゾンビの役をやってる子どもの眼にピンポン球が付いているというのは、この本からの影響(という設定)なわけです。こういうところは、細かい設定の映画です。

そのほかにも、主人公が親に隠れてプラモデルを作ってたり、思い当たることが多くて面白かったです。上段写真で鋭意塗装中のプラモデルは、オーロラの「ノートルダムのせむし男」です。

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アメリカのオタクっぽいブログを読むと、これは発売時(1960年代の前半)の子どもたちには「トラウマ模型」だったみたいですね。「せむし男」と「ノートルダム」のどちらの語感もコワかった…なんて書いている人もいます。

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伊藤隆介
映像作家/美術作家
ときどき評論執筆

Ryusuke Ito
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