Realistic Virtuality: Ryusuke Ito

現実的な仮想性: 伊藤隆介/制作の周辺

超群島−ライト・オブ・サイレンス (24):原爆ゲーム(Atomic Bomb Game)

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フレームは金属板を曲げたもの、裏面はボール紙製。
A.C.Gilbert Company, New Heaven, Conn(現CT), USAとある。


現在発売中の芸術新潮(2013年11月号)の「World」欄で、ロンドンのV&A Museum of Childhoodで「戦争ゲーム展」が開催されている旨の記事があった。
その図版のひとつに、1945年のアメリカ製の「原爆ゲーム」という信じられない代物があって、呆れた人もいるだろう。

同じ物が、僕の仕事机の上に20年以上も置かれている。
被爆国の感情としては、あまりに“senseless”、あまりに無邪気な遺物だが、だからこそ、この物体には戦争をめぐる人間の実相のようなものが、あからさまに表出している気がする。
そもそもは学生時代、シカゴの骨董屋で買い求めたものだ。留学生にはやや高価な買物だったが、日本人である自分が持つことが意味のある品のような気がして手に入れた。

この玩具を手に入れて間もなく、フランスから日本へのプルトニウムの海上輸送のニュースが、アメリカのメディアを騒がせた。
NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)のニュース解説での、識者へのキャスターの最初の質問は「日本は核武装を行うつもりなのか」だった。(原水爆については)加害国で、日本の最大の「同盟国」の、リベラル(アメリカでいえば左寄り)のメディアですらこうなのだから、残念ながら戦後日本の平和運動も、非核三原則も、アピールとしては国際的な訴求力が無かったと実感せざるを得ず、やるせない気持ちになった。
何より被爆国自身が、再処理したプルトニウムを欲しているのがジョークのようだった。

当初は、この玩具をめぐる短篇映画を作れないかという思いもあったが、それは若造には難しい芸当だった。
以後、この不吉な品物は机の上から、複雑な感情と共に、アイロニカルなインスピレーションを送り続けている。と共に、自作の意味をはかる物差しとしても機能している。


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伊藤隆介
映像作家/美術作家
ときどき評論執筆

Ryusuke Ito
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