Realistic Virtuality: Ryusuke Ito

現実的な仮想性: 伊藤隆介/制作の周辺

Siskel & Ebert(シスケル&エバート)

Snoopy&S&E

掃除をしていたら、2013年の「スヌーピー展」のチケットを発券、じゃなかった発見。
裏面が、マンガのストリップ(一段)になっていてる。映画館のチケット売り場についてのギャグで、内容はおそらくこんな感じ。

(左から)
 サリー「なんでこんな映画を観に来たのかしら。」
 ルーシー「私も同じことを考えてた。」
 フランクリン「テレビに出ている2人もけなしてたし。」
 バイオレット「観なきゃわからないわ。」
 チャーリー・ブラウン「きっと、いいところもあるとは思うんだけど。」
 スヌーピー「犬がヒーローになる結末とかね。」

この「テレビに出ている2人」というのは、アメリカで1970〜1990年代に活躍した映画評論家ジーン・シスケル(Gene Siskel)、ロジャー・エバート(Roger Ebert/イーバートとも)のこと。
2人の名前を冠したテレビ番組「Siskel & Ebert」などで、毎週、新作映画のレビューを行った。辛口な上、2人のテイストは大きく違うので評価が分かれることもあったが、そこが面白く、信憑性もあった。番組内で「おすすめ映画」は親指を立てて「Thumbs up」というジャスチャーで示し、2人とも推薦の映画は「Two Thumbs Up!」として、該当作品にとっては大いに宣伝効果があった。

この番組に勇気つけられるのは、シスケルが「シカゴ・トリビューン」、エバートが「シカゴ・サンタイムス」の映画記者だったということだ。
映画産業の中心は西海岸、それに対する東海岸…というかニューヨークがあるが、何もない(と言っては語弊があるが)中西部において、しかも地方紙の記者2人(ご当地ではライバル紙)が手を組んで、アメリカの(ということは、世界の)映画界に、ペンで影響を与えたというのは愉快だ。
それに比べて、優秀な記者たちの専門性(と、マーケットにおける潜在力)を、「ジェネラリスト」として浪費してしまう日本の地方紙の官僚的文化(たとえば、専門性の高い記者たちをすぐに移動させてしまう)は非常に残念だ。

シスケルは1999年に、エバートは2013年に物故者となっているが、2人の番組の様子と、作品評価は以下で見ることができる。
http://siskelandebert.org/

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伊藤隆介
映像作家/美術作家
ときどき評論執筆

Ryusuke Ito
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